勝手な電子工作・・

勝手なオリジナル電子工作に関する記事を書きます

高電圧測定器

前々から考えていた「喋る高電圧測定器」です。最近の雷に刺激されて完成。本日テストしうまくできたようです!

ATmega328Pのプログラム修正に便利なように無圧ソケットを使用。

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音声はプログラムによりPWM出力。測定原理は分圧するだけとはいえ、インピーダンスが高いため商用電源等のノイズ除去には工夫が必要。しかし、ほぼソフトウェアだけで作っているので、そういうノイズ除去は比較的簡単に統計処理でできますね。

中身は下の写真。アルカリ単4電池を使用し3V入力(使用時は50mAほど消耗)から5.00V安定化電源として供給。真ん中にあるPWM音声増幅用アンプ、それに表示用LCD(表示は要らないかも。どっちみち測定値は音声で聴くだけなので)。高圧を扱う際に、表示などを見ずに手元に細心の注意を払いたいわけなのでこれを作ったわけですから^^;

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分圧用外部抵抗は10GΩを作成(1GΩx10直列)、それでも10万Vでは1Wを消費してしまいます(例えば1GΩ-0.25Wなどでは一瞬で焼けるし、測定電圧自体を下げるので不可)。

最初の試作では測定器内に2GΩを収容しましたが、3万Vあたりからは内部でのスパーク防止が難しいために断念し、結局外付けにして抵抗値もとりあえず大きくしたのがこの試作。

自作基板はいつものことですが、はんだ付けが少しやり難くとも、時間をかけずに速く作るため、生活の知恵により(?)勝手ながらランドなどは無視^^。削るのはCNCで15分。

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本日テストした環境は、小さなフライバックトランスを使った手作り高圧交流を、N倍圧整流したもの。説明が煩雑になるのを避けるため、テスト環境を作る際のメモを添付します。きたないですが。

このしくみではさらに高電圧が作れます。しかし、まねされる方は十分ご注意くださいね。記事の最後に注意書きをいれておきますので必ずみてください。

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これで直流高圧を作るとスパークは常時14mm以上。つまり4万ボルト程度あることがわかる。

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f:id:a-tomi:20180901164318j:plainそれをスパークさせない状態にして測定します(スパークさせると電磁波でLCD表示がへんになりやすい)。測定で4万ボルトを4マイクロAほど消耗するわけですからその分電圧が落ちて測定されますね。

はてなブログを初めて使うのですが、動画はいれられないみたいですね。代わりにリンクを入れます。

www.youtube.com

少し余談です。

その1:普通のCockcroft-Walton回路との違い

高電圧を作るのが目的であれば、N倍圧整流器を拡張していけばどんどん上げられます。普通のCockcroft-Walton回路ですと正または負に一方的に伸ばしていくため、供給電源側の電子が全体として過剰になったり不足になったりして、スパーク事故につながります。

例えば商用電源からACアダプターで供給し少し時間が継続するとアダプター内でスパークを起こし、アダプターを壊したりします。思わぬ箇所のスパークや感電につながって危険です。

ここでご紹介したN倍圧整流はそのようなことを防止するために筆者が考えたもので、正負のバランスをとることで安定した昇圧ができ、かつそのような事故を防ぐものです。平衡型CW回路といえるかもしれません。

その2:多段とするご利益

Cの容量は周波数に応じた適切な値としますが、Cockcroft-Walton回路のCの耐圧は供給電圧の2倍ですむので、高耐電圧の高価なキャパシターを使わずにできるために助かるわけです。

その3:Marx-Generator

特別な実験目的があり、もっと電圧を上げたい場合で、高い耐圧のコンデンサーがもしあるときは、この先をMarx Generator回路に接続します。その理由は、昇圧するにしたがって一時に使える電流が限られてくるためです(エネルギー保存則で当然ですよね)。

例えば雷実験用の50万Vを作りたい場合などは次のようにします。次の例は耐圧5万Vのコンデンサーを9段(それしか持ち合わせがなかったので)組み合わせて、45万Vまでが発生できる、筆者がかつて作った小さな実験装置です。

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これに3万ボルト強の直流出力をつなぐと、一定秒数毎に30万Vに達し、大きなスパークが発生します。その長さは常時95mmを超えます。たいへん危険な回路でもあります。

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注意書き:高電圧を扱う際は十分にご注意ください。対策に自信がないときは絶対にまねしないでくださいね。

1)充電された高電圧の危険:たとえ小さな仕組みでも、キャパシターに蓄電された高電圧は非常に危険です。命に別条が生じ得ますから十分に防御してください。充電済のコンデンサーは何時間たっても高電圧を保つことが多くあります。きちんとした(感電しない)放電方法を準備して、実験1回毎に必ず放電してください。

2)スパークに伴う危険:スパークには規模に応じた量の紫外線、X線などの他オゾン等の有害物質発生が伴います。①見るときは紫外線保護めがねを着用、②スパークの近くには寄らない、③長時間やらない、④部屋の換気に気を付ける

3)思わぬ高電圧発生の危険:ここで用いたN倍整流回路の仕組みでは、LC共振で思わぬ高電圧が発生することがあります。防止には、①二次側コイルのインダクタンスLを測る。②整流回路を作る前に発振周波数fを測っておく。プローブを近くに置くだけで測れます。分圧しても直接つなぐとオシロを壊しますから注意。③共振するCを計算する:f=1/(2π√(LC))。④そのCから数倍離れた値のキャパシターを使う。

4)整流前の交流による高熱交流の高圧は端子間が近いとアーク放電し高熱を出します。いったんアークが出ると間が離れても持続することがあります。ですから高圧交流の両端が近づかないように設定します。

※これに限らず一般的なことですが、危険防止のための防護メガネや絶縁手袋、絶縁シート、防炎シートなど、必要なものはきちんと準備し、実験前に周囲を十分に片づける、火災予防をする、いざというときの処置を準備する、慌てずに落ち着いてステップを踏みながらやる、などを考慮してください。この記事によって事故がおきても責任がもてません。自己責任ですのでくれぐれもご注意ください。

 

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