勝手な電子工作・・

勝手なオリジナル電子工作に関する記事を書きます

オリジナル・レーザープロッター その4 極座標型がいい!

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この連載の中では初の新メカニズムをご紹介します。オリジナルの極座標エングレーバーで、上の写真はJPG画像から10x5センチに刻印したところです。

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カニズムの形はこれまでの連載中のXY型と同じに見えますが、実は大違いです。

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下にあるのはY軸に沿う水平移動板ではなく、今回は単なる回転板です。

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つまりXY座標を使わずに極座標を使っています。ご存じのとおり極座標は長さと角度だけで位置が決まります(電子回路好きの方は交流の複素表記、オイラーの式みたいなものとお考えいただくと分かり易いかも)。こんな感じで刻印します。

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このメカニズムの利点は作り易くコストが安いことです。それでもプロッティングはXY型とほぼ同じ精度が出せます。(ただし一般のソフトはXY用なので使えません。)特徴は、

(1)メカの構成が楽:リニアステージ(直線軸)1つと回転板を使う。回転板は1方向にだけ回すようにすれば、バックラッシュ(あそび)の影響を小さくできる。

(2)リニアステージの短縮:直線軸の必要スライド長は、ほとんどの場合にXY型より短くて済む(例:アスペクト比2対1の画像なら、必要長はXY方式X軸の1/√2で済む。例えば30cmスライドを20cmスライドに。)

(3)縮尺の設定が簡単:エングレーブ画像の縮尺拡大値は直線軸のステッパーだけで設定できる。

(4)部品数が少ない:回転軸側側にはストッパー(リミッター)が不要。これまでに書いたステッパーの動かし方であれば、刻印終了時に回転位置を初期値まで進めておくことで楽ちんになる。(バックラッシュによる問題を避けるため、回転方向は常に1方向で回してます。これまでこの連載に書いたとおりのステッパー駆動方法なら位置決めは正確で、その後の初期位置調整が不要となる!)。

(5)工作精度での利点:軸と回転のメカの水平角度に精度が要求されない(どっちみち回して初期位置を設定するわけなので、かなり荒っぽくて問題なし)。

回路やソフトはXYの場合と殆ど同じ(長さと角度を使う位置決めのやり方以外は)で、ステッパーのX側を長さ用の直線軸に、Y側を角度用の回転軸に使います。

このスタンドアローン型エングレーバーはArduino-Uno(というよりマイコンATmega328P)1つだけを使って、容量の余裕十分で動かすことができます(当連載でご紹介したように、PCで画像から刻印データを作りSDカードに入れて使う方法です。一般的なXY用ソフトは使いません)。

次は他の刻印例です。

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 密度を粗くして刻印(長さ軸、回転軸それぞれ一つ置きにプロット数を減少)しても結果はあまり粗くなりませんが、フルにプロットすると次のように精密にできます。

 

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 欠点はいくつかありますが、主なものは次の点だけです。

(6)回転板の初期位置設定スイッチが必要:最初に回転板の位置を設定する際、減速比が大きいメカなので外力では回せません。よってプログラムで回せるようにしておきます(もっとも、最初に他へ接続して設定するなら不要と言えば不要です。しかしデバッグや調整での手数を省くためには必要ですね)。残り少ないピンを工夫して使わないといけません。

前回紹介した回路では、空いているピンはA3,A4,A5くらいですね。A4とA5は今後のI2C接続(例えば液晶をつけるなど)のために開けておきたいところなので、A3を使います。これに順方向用(Fwd)と逆方向用(Bkwd)の2つのプッシュスイッチをつける回路として、次のようにしました。

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アナログ入力値が高ければ(例えば1000以上なら)順方向(Fwd)スイッチが押されたとみなし、低ければ(例えば24以下なら)逆方向(Bkwd)スイッチが押されたとみなします。もちろんそれ以外なら押されていないわけです。このやり方はどのマイコンにも通用するピン節約法ですね。

使い方として、逆方向の場合には回しすぎておき、最後に順方向に戻すことでバックラッシュが避けられます。

 

回路図は今までのと同じで、それにA3ピン(=D17ピン)にこれらのスイッチを加えただけです。前の手書き回路図をいれておきます。汚い手書きですが。

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前回作ったPCB基板はXY用の本番機に使っているので、今後また時間のある時に上の変更を入れて作るとします。 ブレッドボードでは次のようにしています。右上にあるのが今回追加したスイッチ2個です。

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当面はこれを実験機の後ろにおいて操作しています。


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この連載の最初(その0)にメカの種類を3つ書きましたが、今回さらに3種類を付け足しておきます。今回のメカは次のメモの5番目です。毎度汚いメモですみませんが。

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4)は刻印対象が曲げられる材料のときに限られますが、同じように作れますね。ただし原理はXYと同じです。

6)は投射型ですがそのままだと大変危険です。たとえ実験段階でもレーザー光を横へ向けるのは絶対に避けないといけません。強いレーザー光直視は瞬時で失明するし、事故の元でもあります。実装でも実験でも必ず下へ向けますし、どれもレーザーの運用基準に沿うことが必須ですね。

下向きにしている場合でも、反射光が見えるときは保護メガネ必須です。この実験ではカメラだけに反射光を見させていますが、カメラにとっても危険ですね。万一ネジなどに反射すると直射と同じ危険がありますので厳重注意。

 

この記事は連休中の昨日に書こうとしていましたが、途中で用事がはいったので書くのが今になりました。本日はこれに使える時間が限られているためこの辺で。。。使ったプログラム全部(といっても少量でできています)を次回あたりに掲載して説明したいと思います。

 

最後に、毎度書きますが大事な注意です。

*レーザーは失明や傷害、火災等の危険を伴い、周囲にも危険がおよびます。関連法規と取扱い基準(http://kikakurui.com/c6/C6802-2011-01.html)などに従って、正しく管理してください。この記事をみて自作される場合も全て自己責任でお願いします。

 

 

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