2011年にガイガーカウンター各種を自作された電子工作の愛好者は多いでしょう。当時はArduino環境が出回る前のため、PICやAVRなどを使って作りました。筆者もその一人で様々な機能の装置を作りました。
いまさらなぜこれを記事にするかというと、いまやArduinoや便利なIOデバイスがたくさん出回り、設計・製作がとても簡単になったのをご紹介するためです。ここしばらくブログ記事を書かず、少しずつの趣味の時間(1日30分~1時間)を、この製作にあてたため、少し間があいてしまいました。
中身やプログラムなど、このシリーズで何回かにわけてご紹介をしたいと思います。大体つぎのような内容になるかと思います。
1)このカウンターの特徴
2)GM管用の安定した(かつ低消費電流の)電圧供給方法
3)ブレッドボードでの試作と測定
4)GM管信号の都合のよい取り出し方
5)固定長信号に変えた伝達
6)カウントと計算、表示(CPMからμSv/hへの変換方法)
7)実装など
手始めに、このカウンターの特徴は次のとおりです。なぜこうなるかを、これから何回かに分けて解説しようというわけです。
①CPM(Count per minute)は設定カウントに要する時間の計測から逆算
速い測定を要する時は設定カウントを小さくし、高精度の測定をしたい時は設定カウントを大きくすることで、どのような性格にもなります(フロート属性で計算するので大小自由です)。その変更は、プログラムの数値指定1か所を変えるだけでできます。
(その後、空きピン2つにDIPスイッチをつけ4種類が指定できるようにしました。迅速測定のカウント数からその125倍の範囲で指定できます。そのうちに続きの記事#7で紹介使用と思っています。)
②CPMからマイクロシーベルト/時(μSv/h)への変換方法
単にCPMと比例させるのでは低い値で誤差が大きくなります。それを避けるために独自の方法で行っています。後で詳しく書くとして、ここでは簡単に説明しておきます。
CPM対μSv/hについて、3点の指定から3つの変換用係数を自動計算します。その1点目(P点)は各GM管の仕様として提供される高線量値を使います(Co60の数値の場合Cs137の値に置き換えます)。2点目(Q点)は他のガンマ線機器で測定するか公表値により線量が明確な(低い)CPM値を多数回測って平均を求めた点。3点目・(O点)は原点O(0.0)です。低い領域で誤差を出さないための工夫です。また、必要に応じて指数平滑法も適用します。
なお、その後、GM管を変えても、複数台相互間でも定数を含めプログラム全てが同じになるよう、Q点の校正値は個々にマイクロSDカードで与えるように改善しました。これについても続編#7でご紹介したいと思います。
③リアルタイムクロック(RTC)を装備
正確な時刻ICを用い、計測値と共にマイクロSDカードに記録します。ですので、そのRTCの設定、調整機能も本器に内蔵しています。
④液晶ではなく見やすいLEDを使用
バックライト付き液晶なら見やすいですがその分電流を消耗しますし、部品がかさばります。4桁LEDなら明るくて見やすいですが同様に電流を消費しがちです。ここではデューティ比などの調整によって、電流消費を抑えています。
⑤GM管への安定した高圧供給
安定した高圧が供給でき、温度による電圧変動等も殆どありません。電圧は自由に設定できほぼどのGM管にも対応します。
中身は次の写真のようになっています。
ATmega328P(Arduino)はLEDの下に隠れています。右上は信号変換用のPICマイコンです。むき出しの6ピン雄端子はSPI接続端子で、収容ボックスの上蓋に取り付けるマイクロSDカード装置へつなぎます。
4桁LED表示器をつけない状態は次の写真のとおりです。
実装用の回路図は次のものです。手書きですみませんが。
はじめにブレッドボードで作る際は、次のピン割り当てを使うと簡単です。(ただし、本番用ができあがったら、多少面倒でもそのピン割り当てにあわせておいて保守に使うのがよいですね。)
上の図で値を〇で囲んだのは、試作して調整した後の抵抗値および容量値です。ブレッドボードへの試作は次のようになりました。かなり簡単ですね。アナログ回路部分の調整はこれが使いやすいです。
おなじものをArduino-Unoでも組んであります。
こちらはどうしても配線がすっきりしませんが、ICの抜き差しなしでプログラムの確認・調整・デバッグを手早く行なうためには欠かせません。
さて、1回目はこのあたりで終わり、次回は電源部から順次解説していこうと思います。もちろん時間のあるときだけですみませんが。
この連載:
上に書いた回路の一部を次の#2記事の最後で修正しました(12/8/2018)。
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