勝手な電子工作・・

勝手なオリジナル電子工作に関する記事を書きます

超検電器

箔検電器は今でも教育用に使われているようですが、プラスに帯電しているのかマイナスに帯電しているのかはわかりません。計器で検出すればわかりますから、高い入力インピーダンスの回路で検出してみます。

トランジスタを「エミッタフォロワー」にして使えば入力抵抗は数メガΩ以上になりますし、FETを「ソースフォロワー」にすればさらに高くできます。次の例は入口にPNPとNPNの2つのトランジスタを使い、エミッタフォロワーを経由して、プラスかマイナスかをマイコンの2つのデジタルピンに入力するというごく簡単なものです。

f:id:a-tomi:20180908165239j:plain

こんな簡単なツールでも、例えば筆記具がプラスとマイナスのどちらに帯電するかなどが、ただちにわかります。

www.youtube.com

それなら、現代の計測用オペアンプを「ボルテージフォロワー」にして使うとどうなるでしょう?入力抵抗は数百ギガΩ以上となりテラΩレベルになります。やってみない手はないですね。

まずは次のような回路を考えました。測った電圧を数値で表示してみようという考えです。

f:id:a-tomi:20180908170052j:plain

テラオームレベルの入力インピーダンスでは、入力は簡単にプラスかマイナスの端(つまりレール)に張り付いてしまいます。それを避けるため中立点(つまりオペアンプのグラウンドレベル、回路全体ではプラスマイナスのちょうど真ん中)から抵抗R3を介して引っ張る必要があります(R1とR2は中点を得るための分圧器です、他にスプリッターICを使う手もあります)。そして、このR3がツールの入力インピーダンスを決めてしまいます。

数十ギガΩの抵抗器は入手が難しいため、そのR3をどうやって数十ギガΩ以上に作るかが大問題です。まずはマイコンを使って高抵抗の測定器を作りました。高抵抗の簡単な測定器があれば、気付いた材料を手あたり次第に測っていくことにより、そのうちに良い材料が見つかるだろうというわけです。

身の回りのいろんな材料を少しずつ1か月ぐらいかけて測って行ったところ、カーペット用の滑り止めマット(シリコーン系の素材でできているようです)を使えば安定した高抵抗になりそうなことがわかりました。発熱しないこういう用途だから使えるわけなのですが。

それを使って早速抵抗器を作りしました。マットの適当な大きさを切り取り、巻いて両端をリード線で縛ります。そして、樹脂の管(ストローなど)に入れ両端をプラスチック(ホットメルト)で固めたものです。

f:id:a-tomi:20180908171151j:plain

これを作って測定すると、10~100GΩあたりがたくさんできましたので、欲しい値のものが選べます。作った測定器では次のように測れます。高抵抗測定器では周囲のノイズを打ち消す工夫が必要です。これはArduinoでプログラミングして作りましたが、それについては別の回に書かせていただこうと思います。とにかく、こういう場合には測定器が強い味方ですね。

f:id:a-tomi:20180908171834j:plain

高いインピーダンスでの測定では、ADCへの入力はノイズだらけとなります。作ろうとしている検電器に限らず、高抵抗測定器などでも同じことです。放送やWiFIの電波などもあるわけです。それらはローパスフィルターで低減できますが、商用電源周波数にまつわるノイズは避けにくいものです。

ここで、作る検電器側の表示用プログラムはPICマイコンで作ります。商用電源によるノイズを打ち消すには、50Hzなら20mS、60Hzなら16.67mS、両方を満たすようにするなら300mSの間、一定間隔で多数回計測をして平均をとるのが無難です。0.3秒もあればArduinoなら3千回、PICの典型的な使い方なら1万回近くの計測ができますから。

f:id:a-tomi:20180908172323j:plain

そのような工夫をして、ついに試作機を作りました。結果は上々、これなら「超検電器」ですね。

www.youtube.com

この表示は約20mV単位ですが、正確な絶対値を表示したいものです。より正確にできるオペアンプを物色していった結果、直線性が非常に高くほぼ完全なレールツーレールで、かつ中点の正確な参照電圧も供給してくれる、マイクロチップのMCP6021を使うことにしました。普通の計測用オペアンプと似たような価格です。

f:id:a-tomi:20180908173717j:plain

さらに色々考えて、途中でSMT部品を使ってみたりもしましたが、結局は手作業で作りやすいDIPサイズに落ち着きます。

それと、かつて手作りした高抵抗が、1年近く経ち僅かですが極性(電流の向きにより抵抗が異なる現象)がでているのに気づきました。こうなると電荷を外してもゼロ点ぴったりには戻れません。

そこで、前にたまたま見つけていたドイツ製の20GΩチップ抵抗を購入しました。低価格とはとはいえ1000個単位での注文生産ですから迷いましたが、この際はどうしても完成にこぎつけたいので決断、、。

基板は名刺サイズですが次のようにデザイン。

f:id:a-tomi:20180908205752j:plain

これをCNCで削ると10分ほどです。本題に直接は関係ないですがこの動画をとってあったので掲載しておきます。

www.youtube.com

固定用ネジ穴をあけて基板ができました。固定ネジはできればM2サイズにしたいでが、これにはプラスチックネジを使いたいのでしかたなくM3サイズです。

f:id:a-tomi:20180908210012j:plain

それでできあがった現在のわが「超検電器」はこれです。大分スマートになりましたし、電源もDC-DCコンバータで正確な5.00Vとすることができました。

f:id:a-tomi:20180908174215j:plain

プローブは差し替えにより色々取り換えられるようにしました。測定値は正確なボルト単位の表示です。例えば電池を測ると次のようになります。これはまだケースに収めていない状態で撮りました。極性を変えた時の0.01Vの差は四捨五入によるものです。電圧可変電源で確認し、有効数字が3桁正しいことを確認し、基板の銅箔面に保護用の透明塗装をして出来上がり。

f:id:a-tomi:20180908174809j:plain

これで繊維を調べると、前にはウールと思っていた布が実は混紡であることまでわかりました!顕微鏡で見るより早い!

f:id:a-tomi:20180908175141j:plain

f:id:a-tomi:20180908175200j:plain

こういう糸の単位での細かい測定については、他のプローブを工夫する必要があると思います。しかし、ICピンにも差し替えられますし普通の材料の測定ならほぼ問題なしです。我ながら上出来だと自画自賛。。。^^;

長い紹介はここらまでとします。

 

ところでこのはてなブログは、大サイズの写真があってもどこまでも受け入れてくれるように見えます。どうなっているんでしょう・・・。まあ、動画でないからサイズ的には大丈夫なのでしょうが、とても有難いことです。

(c)2018 Akira Tominaga, All rights reserved.