勝手な電子工作・・

勝手なオリジナル電子工作に関する記事を書きます

Nixie管時計を安直に作る(番外編)

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外出自粛で週末は例によって片付けを開始。そこへ古いNixie管が出てきました。数本なら思い切って断捨離というところですが、9本も出たのでとてもそんなことできません^^;

見るとどれも1982年ソ連製のIN-12A(ИH-12A)で揃っています。

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ピンの傷みもない逸品で、たぶん1990年頃に秋葉原の「日米商事」で購入した使い残しと思います。その頃多忙でも週1回ぐらいは帰りに寄り道して珍品をみつけていました^^;

今寄せ集めたデータシートの主なページは次です。

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LOWになったピンにつながった数値を表示をするという単純な機構です。1番ピンがアノード、2番から11番がその陰極用で0、9~1の数値表示、12番はIN-12Aは空きでIN-12Bはドット表示。

仕様では200V電源から抵抗を介してアノードに接続、LOWにした陰極がネオンガスで光るわけで、グローランプや冷陰極管みたいなものです。

電流は1~2mA(表示によって少し違う)となるよう、またアノード・カソード間電位差が150V以下(140Vあたりが適)になるように制御します。仮に1.5mAで50Vの電位差を作るにはアノード抵抗に33kΩが必要です。もし1.1mAなら45kΩなので、安全側の47kΩでテストしました。

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寿命は7500時間程度とありますが、与える電圧や電流次第です。アノード抵抗47kΩの場合、電源を190Vに固定し各数値表示の電流を測ると、どの数値もほぼ1.1mA前後となりました。

ピンのどれか1つをLOWにして残りをハイインピーダンスするには、例えば①BCDデコーダーICで数値を各ピンの信号に変換(今なら直接マイコンで出す手もないわけではありませんね、ピン数を多く消耗しますが)。そこから②高耐圧トランジスタMOSFET)アレイなどのベース(ゲート)に接続しておき、オープンコレクター(オープンドレイン)接続にするわけです。

 

やり方とデコーダICなどについて詳しく書かれている次のサイトを見つけました。英語ですがGoogleで訳してもほぼ大丈夫。たいへん役立ちます。

IC drivers for Nixie Tubes – GRA & AFCH

 

表示方法は単純なのですが、そういうわけで1本の管を使うのにBCDデコーダ1個と11要素の高圧トランジスタアレイを使う必要があるわけで、配線はどうしても複雑になりますね。どうやって短時間で工作できるか考え込んでしまいました。数値表示の価値がその昔、いかに高かったかの証拠でもありますね^^;

 

時間を消耗したくないので、ここからは安直な方法へと直行です!!

ネットでまずは基板がないか探してみます。eBayなどを漁ると次がありました。

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これだとまだまだ面倒ですから、さらに探していくと次が見つかりました。

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SMDのはんだ付けが不要なので楽そうです。ただ、各管のメスピン48本をどうするか(デュポンメスピンでいけるかも)と、試すにはちと高価か・・ということで次にAli-expressで次を見つけました。

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送料を足せば似たような価格になりますが、専用ピンがそろっているのがいいですね。組立にはあまり時間がかかりそうもない。管がない以外はほぼ出来上がり製品といえるかもしれません。

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主要作業は48本のピンのはんだ付けだけですから、これでちゃんと動くのなら「勝手なオリジナル工作」とはいえない番外編の安直版になります・・。まあしかし時間はいちばん大事ですからね。

注文後10日ほどで到着しましたので、週末に組み立てました。ハンダ付けを含めてたったの1時間半ほどで完了!

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コンパクトでなかなか恰好良いではありませんか!

 

ところがPCB表面のシルク印刷がダサくて気にいりません。当面はラベルライターのテープを貼って、Nerd云々の文字を隠すことにしました。あとで表を全部黒に塗り直そうかな、などと考えています・・^^;

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Webの出来上がり写真として次が載っていますが、支柱の使い方が不適切ではないかな・・と勝手に思います。

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一番短い支柱をPCBと底板の間に使うべきではないかと。そうしないと天板からのNixie管等の飛び出しが大きすぎますから。つまり次のようにするとよいと思います。

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管球用のメスピンのはんだ付けを上手に行う方法についてですが、予めメスピンを各管にしっかり挿しておき、管ごとそのまま基板にはんだ付けしていくと、正確で楽ちんにできました。

RTC(リアルタイムクロック)用のボタン電池を入れれば完成。電池は普通は使っていないCR1220(3V)ですので慌てましたが、幸いトヨタ某車のキーに使っていたのと同じでした。

電源をつなぐと問題なく稼働しました!

 

さて使い方です。

電源はUSBで1Aとなっていますが、測ると450mA程度でした。

全ての操作は次の写真の下の方にある2つのキー(UpとDown)だけで行います。

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この2つのキーの短押しと長押しの使いわけをしますがそれなりに難しい^^;

例えば時刻合わせの場合、Down短押しで各桁の設定モードになりUp/Downで操作桁を移動。Down長押しで数値を変化。Downをしばらくホールドすると設定が終わる(終わらないときもある(・・?)。

Ali-expressの同じ商品の説明の中で、いちばん詳しく書いてあるのを選んでコピーしておくのが良いと思います。その他にバックライトカラーの変更やらSleepモードやら色々あってややこしいですから。

 

最後に勝手な余談を少し。

ここで使ったNixie管を探すとeBayやSOVTUBEなどではまだ扱われているのがわかります。昨日見たときは安いのは1本500~600円程度ですかね。使用時間が7500時間程度の管なので、中古でなく新古がいいですね。Amazonにもありそうですが高価。

それと不使用時は電源オフがいいですね。時刻自体は電池で維持されますので。

さらにホントの余談:

1970年代から数値表示には7セグメントLED等が使われ始めたと思いますが、ソ連では1980年代初めまでNixie管全盛とか。ちらちら調べてみると、1976年秋、ソ連から低空飛行で函館に亡命着陸(!)したベレンコ中尉のミグ25戦闘機事件。機内にはNixie管どころか真空管までも使われ、機体に鉄材もあった事に西側諸国がビックリ。「枯れた技術は絶対確実」の典型例かも・・。ソユーズなどでトラブルが殆どなかったし。

 

断捨離・片付けのつもりが、とんだゴミづくり(?)と時間の消耗になってしまいました。レトロ表示がお好きな方々のご参考にでもなれば幸いです。

 

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